海馬CA1ニューロンにおけるFos発現と場所表象・神経活動の双方的な関係を調べた論文を題材に、北西卓磨さん(@tkitanishi)、吉良信一郎さん(@ShinichiroKira)、田中和正さん(@Kazu_ZT)、柳下祥さん(@sho_yagishita) とディスカッションをしました。(9/22 収録)
Show Notes:
- お題の論文:Fos ensembles encode and shape stable spatial maps in the hippocampus
- 田中さん
- NR田中さん回
- 北西さん
- NR北西さん回 Part1 Part2 *僕が北西さんをピチピチおじさんと呼んでいるわけではなく、北西さんが駒場の教員を「若くてピチピチした(おじさん)」と形容したことに拠ります(萩) そんなこと言いましたっけ、汗 (北西)
- 柳下さん
- 吉良さん
Intro+Fig1
- Harveyラボ
- Greenbergラボ
- 田中さんのトムラボでの論文
- Thomas McHugh
- よく使われるcFos-tTA, Mayfordの作ったライン *knock-inと言ってますがtgです(萩)
- の元論文
- 最初の利根川研での仕事 Fig1fgでshGFPがまあまあ綺麗に見えている
- 田中さんのWiltgen研での仕事
- 松尾先生
- jRGECO1a
- Georg Keller
- のbioRxiv論文 (Mahringer 2019)
- 最近publishされてたV1の方の仕事
- Alison Barth
- Alison Barthの作ったライン
- 尾藤研
- 奥野さんの作ったライン(が報告された論文)
- 海馬依存性の課題
- Tau off:GFP発現がピークに達してから下がるまでの半減期 *shEGFPなのでタンパクレベルでは2h-half-lifeだが、vivoでどう振る舞うかは不明でしょうね (萩)
- ずっとHighの集団…の仕事の例@S1 およびそのマーカーを同定した仕事
- Bito Deisseroth Tsien のendogeneousのcFosそこそこbimodal
Fig2
- 相互情報量
- Rewardの所に場所細胞が増える
- Bayesを使ったdecoding
- 海馬の一部の細胞でreward response, David Tank のDedicated Population for Reward論文
- El Duvelle
- 2-3年前に出てたEl DuvelleのJNの仕事
- 走る速度でFilterをかける Speedでフィルタリングかける発想のもとはMcNaughtonのこれですかね。加えて、単にLIA stateを取り除くのに簡便だという理由だと理解しています。 by 田中さん
- 走る速度でdecodeの精度が変わる:例えばこれです。遅い時の方がデコード性能は上がるようです(Fig. 2B赤線) by 北西さん
- 追加議論(萩):収録中に触れなかったExtDataFig8、読み直してみるとこれが論文通して一番大事なデータなんじゃないかなという気がしています笑 k-oをまとめると、次の日に新しくplace fieldを獲得した細胞はFos-highになる可能性が高く、novelな環境に暴露された時の方がこの差が顕著(o)なので、この後のstabilityを追ってもらえれば、Day1-3(rewardがある)を解析するよりも田中さんの仕事との直接比較としてよさそうです。また、f-gの”session”間のplace fieldのcorrelationが0.4-0.5と高く(田中さんが「0.5は欲しい」と言っていたのはacross sessionをさしている?)、”trial”間correlationを見ているFig2gに比べて異様に高いですね。つまりplace cellはtrial-by-trialでは超ノイジーだが、averageすると日(session)を超えてもかなり安定、ということになります。これって海馬の過去の記録実験と一致しますか?
- ↑に対するリスポンス from 田中さん
- k-oに関して:RetainでもFos-highになる確率が高いので、要はactiveであることとFos-highとが相関しているということですね。fとgとでのsame environmentでのPF correlationの値を比べるかぎり、all cellsとfos-highとで差は無さそうなので、fos-high vs fos-lowでも差は見え無さそうですね。本当にtaskへのengagementが安定性に作用しているのかもしれません。
- 「0.5は欲しい」と言っていたのはacross sessionをさしている?:そうです!
- place cellはtrial-by-trialでは超ノイジーだが、averageすると日(session)を超えてもかなり安定:そうですね。VRはやったことないですが、linear trackとかでlap間比較するとそれなりにばらつきます。日を跨いでのPF安定性を調べている仕事はあまり多くなくって、population vector correlation(Mankin 2012; Rubin 2015)やdecoding accuracy(Ziv 2013)を使っていたりして直接比較できる仕事は多くないのですが、私が見たときはc-Fos negativeのPF correlationがそのくらいの値だったと思います。ただ、PF安定性は時間の影響が大きく、session averageという同じ指標でも、同日で30分くらいの差しかない2 sessionsを比べた場合、PF correlation 0.9とか普通に出ると思います。あとラットマウスの種間の違いも大きいですね。ラットの方が断然高い値が出やすいらしいです。
Fig3+4
- 以前Greenberg達が作ったFosのトリプルノックアウトの系
- Affinity propagation k-means的なmessage passingのクラスタリング手法だが、最初にクラスターの中心になるデータポイントを指定しないのが特徴
- 電気生理で時々使うNoise Correlationの解析、例えば これ
- カスケード、Synfire Chain
- Lisa GiocomoのGrid Cell論文remapping論文 in VR
- Rate Remapping (Place fieldは同じでrateが異なる)
- Fig. 4のPlace Cellの定義:”For each cell, the average activity within each bin was computed” …”Significant peaks in the spatially binned activity were determined by a shuffle test” …“Peaks in the true binned activity that exceeded the 99th percentile of the shuffle distribution for at least three consecutive spatial bins were deemed significant peaks” …. “any cell with significant peaks is referred to as a place cell, with the significant peaks of that cell corresponding to its place field.”だそうです。平均で求めらてる模様。
- 1st authorが書いたbehavioural engagementに関する前の仕事 (これのFig3ですが、disengageするとplace cellの数もqualityもまあ減ってるのでは? by 萩) (ええ。この辺は、task engagementかも、とかattensionかも、とか何らかのspatial computationかも、とか昔から言われてましたよね。 by 田中さん)
- Lickが5回~:”For all place field analyses, trials were only considered if they met the following criteria: at least three licks, duration between 4 and 60 s, no experimenter-triggered rewards and occurring before 1.2 ml of cumulative reward had been delivered” 3回でengageしてるというには低いcriteriaだなという印象…(萩)
Fig5+Discussion
- FamiliarなEnvironmentだとFosはほぼ出ない、の論文
*田中さんの仕事(novel environment exposure)と今回の論文(familiar context)の、Fos(high/+)のstabilityに関する議論でfamiliarとnovelを逆に言い間違えてしまっています。紛らわしくて申し訳ない。(萩) - 最初のFos(Fos-tTA::TRE-H2B GFP)とwell trainedなFos(IHC)のoverlap度合いに関連して, 文脈的恐怖条件づけの場合のdrift等
- Endogeneousな発現のタイムコース、古典的にはこれ。これは結構ダラダラ続いてるので、タスクによる差、タスク後にマウスをどう処置したかとかも効いてきそうですね。(萩)Wiltgen labでは自分たちでタイムコース取ってました。どっかの論文のサプリとかに入れておけば良かったですよね。。。(田中さん)
- Hausserの最近の仕事(場所細胞をオプトで叩くと行動が出る)
- 最近Twitter界隈ではCausalityに関する議論がある:いろんなスレッドがありましたが、この(Tweetに基づく)PDFが一番核心を突いていたように思います。 by 吉良さん
- ジャーナルにまとまったものだと、こちらです。 by 吉良さん
- 私的に最も刺さった引用はこちらです。(上記PDFより) by 吉良さん
Imagine that a subject is performing a demanding but simple visual task in which they press one of two buttons based on a decision about some visual input (e.g. Which way are the dots moving?). We want to know: what brain areas play a causal role in supporting this task? Then, as a causal perturbation, a researcher hits the subject on the toe with a hammer and this disrupts their performance. Question: Is the toe causally involved in this task? - 北西さんのNeuronのやつ(でも一部を操作)
- AP1 ComplexとFosについてのレビュー
- Hunger stateが神経活動に影響してくる例@V1
- ドパミンかけたらcFosが出る
- 尾藤先生はCREBでForskolin有無の比較
- ドパミンのシグナル経路
- ドパミンかけるとその場で可塑性が変わる、例えば柳下さんのお仕事
- Clifford Kentros
- アテンションを高めて空間タスクをやらせると安定性up
- NMDA受容体のblockade (CPP) で場所細胞の安定性落ちる(MK-801じゃなかったですね、汗 by 北西さん)
- 穴がいっぱい空いている場所に3個rewardを入れ、場所を毎日変えていくとplace fieldがどんどん変わっていく
- Schitzerがendoscopeで見始めた時
- 場所の表象とは直交した向きにdriftしていく
- Eichembaumの所から出たpopulationレベルのrepresentation論文
- ノイズ活動のpopulation構造を見てやるとremapping後も維持されている すみません、FusiなじゃくてFentonでした。。。 by 田中さん
- ちなみにStefano Fusi
- ソロモンの指環
- 学生たちと一緒に書いたCurrent Opinionの総説
- Steve Ramirez
- 櫻井ラボ
- 冬眠論文
- Torporの論文
Editorial Notes:
- JCでこんなに論文ほじくり返したのは久しぶりです!マニアックなディスカッションもあって、とっても濃い2時間でした。またぜひ呼んでください!次は辛口ゲストを集めてNR主催のお二人の論文とかどうですかね?(笑)(田中)
- 濃くて楽しいJCでした!それぞれのラボのスタイルが垣間見えるのも面白いですね。(北西)
- 海馬やfosを専門にやっている方々と議論できてよかったです。ぜひ定期的にやって欲しいです。今回のような分野横断的で新しい方向性の論文だと特に盛り上がりそうです。他の方々の議論を聞くのも面白そう(柳下)
- 普段あまり接することのない、分子と神経活動の関係を扱う論文について議論する機会をいただき、とても勉強になりました。図表のフェアな作成法や因果性の解釈についても、様々なご意見を伺うことができて充実したJCでした。(吉良)
- 音声での論文紹介をはじめた当初から、正直どのくらい伝わるんだろうか…と思いながらやってますが、最近では自分達が楽しめてその雰囲気が伝われば、ドメイン知識自体は別にどうでもいいかなと開き直っています。メンバーを変えつつ定期的にやれると楽しそうです(萩原)
- これだけ大人数のディスカッションなのに議論が発散しなかったことも印象的でした。皆さんお忙しい中ご都合つけてくださりありがとうございました! (宮脇)