#14 Dual-career at Stanford: Dr. Sayaka Inoue and Dr. Masatoshi Inoue – Part 1

日本神経科学会の奨励賞を夫妻でそれぞれ受賞した井上昌俊さん(まささん)@feynman1104・井上清香さん(さやかさん)@s_k_inoueをゲストに、お二人の論文の裏話、スタンフォード大学で神経科学を研究する醍醐味などについて伺いました。後半に続きます。(5/28収録)

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  • 奨励賞リンク
  • Axon Remodelingのお仕事:メスの視床下部腹内側部のプロゲステロン受容体陽性細胞(Progesterone receptor expressing neurons in the ventrolateral portion of the ventromedial hypothalamus: Pvlニューロン)の前腹側室周囲核(Anteroventral periventricular nucleus: AVPV)への投射量が性周期(依存的な性ホルモンの分泌)によって変化することを見出した仕事。AVPVに繋がっている時にPvlが活動することがオスの受け入れに重要。プレシナプス・軸索の大規模な構造的変化が大人で周期的に起こる可能性を示唆。
  • R-CaMP2:高感度かつ高速度、そしてHill係数が1に近い(Ca濃度と蛍光変化が比例する)赤色遺伝学的Ca2+インジケーターを作成した仕事。従来のインジケーターでは、Ca存在下でMLCK (Myosin light-chain kinase)のM13配列とカルモジュリンが結合することを利用しているが、このインジケーターではM13の代わりにCaMKKのペプチド配列ckkap(を改変したもの)を利用している。
  • XCaMPs:ckkapをベースとした配列を用いて、R-CaMP2と類似した強みを持つ、青、緑、黄色、赤色のインジケーターを開発したお仕事。更に、これらを開発したからこそ取れるシグナルの応用例をvivoで数多く示している。
  • 深田研:概日リズム、光同調の分子ネットワークなど。既に退官
  • 尾藤研:神経回路・シナプスの形成原理にイメージングやアンケージング、新規手法開発などによって迫る研究室
  • Deisseroth lab(D-lab):オプトジェネティクスの開発や組織透明化をはじめ、様々なツールとその王道的な応用例を世に送り出し続ける研究室
  • 森憲作先生: 匂い情報を処理する嗅球、嗅皮質、その他情動に関する脳領域を分子生物学的な手法や電気生理学的手法を用いて研究。既に退官
  • Nirao Shah lab:脳の性的二型や、オス・メスの社会的行動の遺伝学的、経験依存的な制御機構の解明。2016年にUCSFからStanfordに異動。
  • DLC: 転移学習を利用して少ないトレーニング画像でマーカーレスの姿勢推定を行う。オープンソース。
  • Zach Knightラボ:摂食・摂水行動、体温調節など、体のホメオスタシスが脳によってどのように制御されるかを研究しているラボ。活動したニューロンのmRNAを捉える技術開発(Ribo-tag, Soma-tag)などでも有名。
  • Synaptophysin-GCaMP: プレシナプスに局在するシナプトファイジンをGCaMPに融合し、プレシナプスのイメージングを行いやすくする。
  • Axon Remodeling先行研究:例えばSvobodaラボKomiyamaラボのvivoイメージング論文
  • Dendritic spine先行研究:Woollyらが海馬で、Matsumoto and Araiが視床下部弓状核で、性周期に伴いdendritic spineが増減することをHistologyを用いて示した論文など
  • KimchiとOferの論文: AVPVのTHポジティブ細胞がメス、かつ母親マウスにおいて増えており、養育行動に重要であることを示した
  • 2018年 AVPVのkiss peptin論文
  • POA: POA: 視床下部preoptic area, Pvlの下流の一つ。Lesionにより性行動を抑制するとか、逆に電気刺激により性行動を抑制するとか、メスの性行動制御における機能については議論が分かれている。近年、Stuber研からメスのオスに対する誘引行動(attraction)にPOAのNeurotensin+細胞が重要な役割を果たすことが示されるなど、新たなアプローチで、今後、機能解析が進むかも…? 
  • SvobodaのGCaMP局在論文
  • GAD65: GAP43の間違い…
  • GENIE:ツール開発のためにめちゃくちゃタンパク質をエンジニアリングするジャネリアのプロジェクト
  • GCaMP6の論文
  • Robert CampbellのR-GECO
  • YC6でも使われている
  • ボイデンの自動パッチによるボルテージインジケーター開発論文
  • 狩野研
  • 竹内さん: 元狩野研の竹内敦也さんのこと
  • GCaMPとG-CaMP: G-CaMPを様々なグループが開発する過程でナンバリングが競合し、欧米のグループのナンバリングがGCaMP, 日本のグループのナンバリングがG-CaMPになった。
  • jGCaMP8: データはこちら 論文はまだ
  • mNeon: 明るい緑色蛍光タンパク質mNeonGreenのこと
  • In Utero: 胎児の脳室にプラスミドを導入し、エレクトロポレーションによって脳室に接する細胞に遺伝子を導入する手法。エレポを行う時期によって皮質のどの層に遺伝子を導入するかを限定できる。
  • B6とICR: マウスの種。B6の方が胎児の数が少ない・養育行動が微妙などの制限があって難しい。
  • Max Planck Floridaの谷口先生:神経回路の発達、特に抑制性ニューロンの貢献についての研究がテーマ
  • 喜多村先生:HausserラボでShadow patchを開発したin vivo targeted パッチのパイオニア
  • ASAP: ボルテージインジケーター。cpGFPを膜電位感受性タンパクの細胞外ループに挿入。スタンフォードのMichael Linらが開発。
  • QuasAr: Archaerhodopsin3の内在的な蛍光が電位依存的に変化することを利用、変異を導入することによって性質を向上させた電位プローブ。ハーバードのAdam Cohenらが開発。
  • Alice Ting:proximity labelling等の生化学的・遺伝学的なツール開発を得意とするラボ
  • Liqun Luo:遺伝学的な回路マッピングの大御所。最近はイメージングも。
  • 学長の: Marc Tessier-LavigneのiDISCO
  • Joint Program: 2つのラボに所属してそれぞれのPIの指導の元で研究を行うこと
  • William Allen: LuoラボとDラボでPhD中に(共)筆頭著者としてS3報、C1報、Neuron1報などを出したヒト
  • APEXを使ったZhenan Baoラボとのコラボ論文
  • シュニッツァー:Mark Schnitzerのこと
  • D-labのTRIO論文 (たりあ・れーらー) 。Luo/Malenka (けびんのやつ)のVTA論文とB2B.
  • Roskaの論文:オプトジェネティクスの臨床応用。
  • ChrimsonR:赤色オプトChrimsonに点変異を入れたもの。ボイデンラボから。
  • ChRmine:D-labからの赤色オプト
  • Peter Hegemann:チャネロドを見つけた人(
  • Gero Miesenböck:ハエでoptical control of neuronal activityをやった人。P2X2/ TRPV1を使用
  • LOVドメイン:青色光で大きく構造を変化させるタンパク質ドメインで、多くのオプトジェネティクスツールに利用されている。例えばこれ
  • Feng Zhang:CRISPR/Cas9をヒトの細胞に最初に適用してノーベル賞が取れるとか取れないとか話題になった
  • 五十嵐さん:モーザーラボ出身、UC IrvineでPI
  • Axel研: Richard Axel  のーべるろーりえーと
  • Kandel研: Eric Kandel のーべるろーりえーと
  • Frontal-海馬コネクション
  • マウスのストレインごとにフィアコン *落ちた先はチャネルではなくオーファンGPCRでした汗

Editorial notes:

  • “さやかさん”と呼ぶと思わず笑ってしまうのは、魔法少女ですか?となってしまうから。ソウルジェムがにごって魔女化しないことを切に願っております (萩原)
  • 収録中にルンバが動き出してとても焦りました(宮脇)
  • とても楽しかったです!緊張のせいか(?)、自分の日本語が不自由すぎてびっくりしました。お二人とも質問上手、聞き上手で楽しく話させて頂きました。ありがとうございました!!(さやか)
  • 夫婦でインタビューを受けるというのは人生初イベントでした。お二人の力によりインタビュイーでしたが、普段聞けないことが聞けて良かったです。(まさ)